やりたいことが決まらないなら、仕組みだけ先に作ればいい
続かない。やる気が出ない。この手の悩みは、たいてい意志の問題として処理されます。根性が足りない、覚悟が足りない、と。
私はそう思っていません。ほとんどは仕組みの問題です。
正直に書くと、私には長いあいだ目標がありませんでした。これがやりたい、というものが特にないまま進んできた。それでも手が止まらずに済んだのは、やり方をいくつか持っていたからです。今回は、そのやり方のほうだけを書きます。目標がなくても回るものばかりなので、今やりたいことが見つかっていない人でも使えます。
まず、全部「実験」ということにする
私は基本的に、やることを全部「実験」として扱っています。
人生で今が一番若い。今日と明日では条件が違う。それなら、何をやっても実験だと考えたほうが正確です。
この言い換えには実用上の効果があります。「失敗」という言葉が使いにくくなることです。
理科の実験を思い出してください。予想と違う結果が出たとき、それは失敗ではありません。ある条件のときに、ある結果になる。その対応が一つ分かっただけです。次はどの条件を変えるかを決めればいい。手順を間違えたなら話は別ですが、予想が外れたこと自体は情報です。
自分の行動も同じ扱いにできます。早起きを試して続かなかったのなら、その方法が自分の生活条件に合わなかったと分かった。次は起床時間ではなく寝る時間を変えてみる。これで話が前に進みます。
始めるときのコストも下がります。実験は一回で結論を出すものではありません。一回で決めなくていいと分かっていれば、手をつけるハードルはかなり低くなります。
意志ではなく、条件で動くようにする
行動が続かない最大の原因は、毎回その場で判断しているからだと思っています。
やろうかな、でも今日は疲れているし、明日でもいいか。この判断が毎日発生します。判断のたびに迷いが入り、迷えばだいたい先送りになります。
そこで、条件と行動を先にセットで決めてしまう方法があります。if-thenプランニングと呼ばれるものです。私は生徒の自習指導にも組み込んでいます。
書き方は単純です。
- 風呂から出たら、机に座る
- 電車に乗ったら、単語アプリを開く
- 家に帰ったら、カバンから課題を出して机に置く
「やる気が出たらやる」ではなく「◯◯したら△△する」の形にする。ポイントは、きっかけを自分の意志以外の場所に置くことです。風呂も電車も、毎日勝手に発生します。そこに行動を紐づければ、判断の回数が減ります。
あわせて、やったかどうかだけ記録します。カレンダーに印をつける程度で十分です。ここで大事なのは、できなかった日を評価しないことです。反省を始めると記録自体が嫌になります。実験なので、記録は結果であって成績ではありません。
頭の中を、いったん全部外に出す
考えがまとまらないまま動けない、という状態もよくあります。これも仕組みで対処できます。
私が使っているのは二つです。
一つ目はマインドマップです。目的は整理ではなく、とりあえず自分の脳の中を取り出すことです。箇条書きで構いません。順番も気にしない。深く考えずに書き出すことだけを目的にします。整理は、出し切ってからで間に合います。
二つ目は日記です。私にとって日記は記録ではなく、考えるための行為です。他人のことを考えず、自分のことだけを考えられる時間になります。
書き方で意識していることが二つあります。
一つは、5秒を200字にするつもりで書くことです。ほんの一瞬の出来事を、無理やり引き延ばして書く。そのとき何を見て、何を思ったのか。細かく書こうとすると、自分でも気づいていなかった部分が出てきます。
もう一つは、主語を変えて書くことです。「私は」ではなく、他人の話として書いてみる。自分だけの小説のような形にすると、同じ出来事でも冷静に見られます。自分の話は、自分の名前がついているだけで扱いが難しくなるものです。
道具は何でも構いません。紙でもアプリでも結果は変わりません。大事なのは、頭の中に置いたままにしないことです。
簡単すぎるところから始める
最後に、一番効くものを書きます。始める位置を下げることです。
授業で私が意識しているのは、解ける楽しさを先に味わってもらうことです。難しい問題から入りません。まず解ける問題を出す。試行錯誤して解けた、という経験を先に作ります。
理由は単純で、簡単だと感じたものは好きになりやすいからです。逆に、最初に難しいものをぶつけられると、そこで判断が終わります。自分には無理だ、と。能力の問題ではなく、最初の一歩の大きさの問題であることがほとんどです。
これは大人にもそのまま当てはまります。運動を始めるなら、まず靴を履いて外に出るところまでにする。勉強なら、教科書を開くところまでにする。物足りないくらいで止めておくほうが、翌日につながります。
どうせやらないといけないことなら、いかに楽しむかを考えたほうが得です。楽しむための一番簡単な方法が、できる水準から始めることでした。
おわりに
やりたいことは、まだ決まっていなくて構いません。私も長いあいだ決まっていませんでした。
全部実験ということにする。条件と行動をセットで決める。頭の中を外に出す。簡単すぎるところから始める。この四つは、目標がなくても回ります。目標がないから動けない、という順番を外せるのが利点です。
そして、回しているうちに結果が溜まります。何が続いて、何が続かなかったか。それが分かってから、やりたいことを考えても遅くありません。
まず一つ、明日の条件を決めるところからで十分です。
同じことを、4年かけて3回書いています
この記事と同じテーマで、過去にも書いていました。
- やりたいことがないのは当たり前!(2022年)
- やりたいことがなくてもいい――でも、そのままでいいの?(2025年)
読み返すと、答えの具体性が毎回変わっています。今の自分にはこう見えている、という記録として置いておきます。